ケニア:ソマリア難民キャンプ

 ケニアの北東部ダダーブ地域はソマリアとの国境から80キロほどに位置する町である。1991年から続くソマリアの内戦を逃れるため多くのソマリア人が難民としてケニアへ逃れた。現在、そこにはDagahaley、Hagadera、Ifoの三つの難民キャンプがある。ソマリアの内戦が終わりをみないなか、国境を越えケニアに流れてくる難民が増え続けている。UNHCR(国連難民高等弁務官)によると、9万人収容できるキャンプにはすでに28万5千人もの難民が暮らしている。

 人口密度が過密するなか、住環境はかなり悪化している。そこでUNHCRは新たな難民を別の地域に移送する政策をとりはじめた。毎週一度、10台ほどのバスを使って行われる。行き先のカクマキャンプまでは未舗装の道路が多いため、一度500キロ離れたナイロビを経由し、そこからさらに800キロ離れたカクマへと移送される。それでも道路事情が悪いケニアでは5日以上かかる。

 カクマキャンプまでの未舗装の道路が続くその長い道のりは赤ん坊や子供たちには過酷なため、バスに乗ることができない。バスが去った後には子供たちと母親、それに年老いた人たちが残される。彼らは飛行機で移送される予定だが、その飛行機がいつ飛ぶのか誰もわからない。

 「ソマリアには行きたくない。もし行っても殺されるだけだし、僕たちの故郷はもうここだけだよ。」、十代の少年たちは口々にいった。

 1991年につくられた難民キャンプでは新たな命が誕生し、そして育っている。彼らは祖国を知らず、キャンプ地が彼らの母国であり、生活圏である。しかし、彼らはソマリアに行くこともできず、ケニアの市民権を得ることもできず、どこの国にも帰属することができない。

 水汲み場で16歳になるワグルサムという少女に出会った。彼女は毎日重いタンクを背負って水を汲みにくる。最近、水の出が悪くなってきているから、いつも水を汲むのに長い間待たないといけないと疲れた顔でつぶやいた。10リットルほど入るタンク4杯、その水を家族9人で大切に使うという。

 難民が増加の一途をたどる中、十分な食料、水を供給することが困難になっている。キャンプでの暮らしは決して楽ではない。それでも彼らにとってキャンプだけが唯一の救いの場である。(2009年)

その他の写真→

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です