ケニアの首都ナイロビから寄り合いバスのマタツで2時間ほど走ると、きれいに整備された林が見えてくる。その奥にはケナリ森林が広がる。その林の中から、背中に薪を背負った子ども達があちらこちらかでてきた。
彼らは一日二度山の中に入って薪を集める。一度目は100ケニアシリング(約120円)で村の市場で売る。二度目は家に持ち帰り、母親にその日の稼ぎと共に渡す。
険しい森の中を30分ほど歩いたところに、それぞれ秘密の薪採集場所を持っている。その場所は誰にも教えない。自然に倒れた大木が、乾期になると良く乾燥して、良質の薪として使えるようになる。
片手に大ナタを手にして、山の斜面に這いつくばるようにして、長さ80センチほどに木を切り裂き、袋につめていく。
3、40本ほどだろうか、薪でいっぱいなった袋を担ぎ、今度は急斜面を登る。子どもの背中には、袋から飛び出した薪は見た目以上に大きく感じられる。まるで薪が歩いているようだ。
何度も足をすべらせ、額に汗をたらし、それでも彼らは草をかき分けてもくもくと進んでいく。途中わき水で顔を洗い、乾いたのどをうるおし、また歩く。
深い森を抜け、政府が管理している整然とした林の丘にたどり着いたころ、後ろを振り返ると作業を終えた子ども達が木々の間からでてきた。その数は30人ほどに上る。この森ではこうした子ども達が100人以上いると言われている。
森に入ってから2時間ほど、重い薪を背負って国道に出てきた子ども達はさらに数キロ先にある村の市場を目指す。そして、再び空になった袋を肩にかけ、今度は家へと持ち帰る薪を集めるために再び森に入っていく。
何度も大ナタで手を切った、子どもに似つかないゴツゴツとした作業者の手に一枚の札を握りしめ、背中に重い薪を背負い1時間ほど歩いて家族の元へと帰っていく。
15歳になるジョージは、毎週二度森に入っている。
「大人は誰もこの森に入らないよ。だって、体の小さい僕たちの方が森の奥に入っていきやすいからさ」、と少し照れながら話した。
彼に今一番望むことを聞いた。
「学校に戻りたい。でも、お金がないからね。母さんを助けないと。」
学校を辞めて何年にもなる彼は、畑仕事しながら、週末になるとまた森に入っていく。(2009年)
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